メンタルケア×詩


①雲に守られた月

 月が雲に守られていた

大きな体に

たったひとつ

月のまわりにだけ

ぽっかりと小さな穴をあけ

雲は大事に月を包んでいる

 

あたたかい雲の中で

静かに穏やかに空に浮かぶ月

 

月はまるで

ママに抱っこされた赤ちゃんのように

安心して雲に身をまかせて輝いている

 

今日の月がとても綺麗なのは

きっと雲のおかげ

 

今日のあなたが美しく輝いているのは

きっと月のおかげ

 

月は雲に守られて

あなたは月に守られて

そうみんな、

何かに誰かに守られて繋がっているんだね。


②人間A 

かえるやひよこは殻を破ってうまれてくる

はじめてみる世界は自分できりひらいたもの

私はお母さんが産んでくれたもの

 

魚やとかげは親ばなれが早い

大人になれば必ず自立する

だけど私は二十歳を過ぎても

親に支えられて助けられて生きている

 

人間は不思議

高等な動物と言われても

決してひとりでは大きくなれない。

決してひとりでは生きられない。

 

お腹が空いたら泣いて、

排泄をしたら泣いて、

構ってほしくて泣いて、

不安になったら泣いて、

満たされたくて安心したくて泣いていた。

 

だけど、

泣いても与えてもらえないことはあって、

悲しくて寂しくてまた泣く。

いつしか私は愛情や優しさを疑い、

ほしいものを欲しいと言えず、

人との関係を壊し、

自分に嘘をついて生きるようになっていく。

 

本当は受け入れてほしかったんだ。

私がここにいることを。

私が生きていることを。

 

世界を切りひらくことなどできない。

不安と疑いだらけで自立もできない。

 

震えながら、

私はそのままの私で生きていく。

不安と疑いを引きつれて生きていく。

 

私が生きるその先に

欲しかった安心があるのかもしれない。

あたたくて心地よい場所があるのかもしれない。

そんな希望とそして絶望の狭間を漂うように生きていく。

私は人間。

そう、未完成な一人の人間A。


③あんぱん

やわらかなパンのベッドで眠っている

ちょっとお疲れ粒あんと

だいぶお疲れこし餡が

甘い香りの寝息をたてて。

 

ふわふわのパンのベッドでくつろいで

すっかり疲れがとれた頃、

体はほかほかにあたたまり、

そろそろあんこは目を覚ます。

 

ほんのり甘いあくびをして

粒々のごまと桜の花でおめかしをしたら、
もう準備万端。

 

ほかほかの体は人肌に冷め、

ツヤツヤのお肌と笑顔でお店に並ぶ。

 

「わぁ、美味しそう」

笑顔のおばあさんと目が合う粒あん。

 

「これこれ」

じっくり見つめてくるお姉さんを見上げるこし餡。

 

賑わう店内で、

優しく持ちあげられて、

それぞれのトレーに入る粒あん、こし餡。

トレーの中で行儀良く順番を待つ。

 

そして、

あたたかなおうちに着くと

袋の中からそっと優しい手でそっと持ち上げられて、お皿の上に乗せられる。
見上げるとたくさんの笑顔に囲まれている。

 

「ふわふわだね」

「美味しいね」

パンのベッドの中で、粒あんとこし餡は深い深い眠りにつく。

甘い香りの余韻を残し、

柔らかくてふわふわのベットに吸い込まれていく。


④成長 

私という地層が

どんな奇跡をたどったのか

私は覚えていない

 

あなたという地層が

どんなふうにつくられたのか

私には分からない

 

だけど、

今あるその姿が語っている

 

その目、その顔、その体が

あなたをつくるすべての要素に意味がある

 

すべり台を踏みはずした足が

迷子になって泣いた目が

侵食、風化を繰り返して

今ここに存在(ある)のだ

 

たくさんの元素が混ざりあい一人の人をつくっている

 

毎日化学変化をくりかえし

地層はどんどん厚くなる。


⑤海

 

海に石を投げると

チャポンという音がして

海はその存在を私に示してくれる

 

笑うように、怒るように、泣くように

毎日違ったしぶきをあげて

 

そう、海だって気分屋さん

穏やかな日も嵐の日もいろんな日がある。

 

その全部が海

私と同じ

元気な日も落ち込んでいる日もある

でもみんな私

どんな私も全部私

嫌いな部分も好きな部分も

 

明日はどんな私かな?

たとえどんな私でも

私以上でも私以下でもない。

私は毎日私を生きている。 


⑥青

私はまっすぐな青にあこがれる

一点のくもりもない空の青

波のない海の澄んだ青

 

私という宇宙には

どんなに掃除をしても汚れが残っている。

 

私の青空には

雲が流れ、雨が降り、風が吹く。

 

私の青い海には

波がたち、魚が泳ぎ、木が流れる

 

純粋な青にはなれないから

まっすぐな青にあこがれるのかな

 

私の青は果てしないグラデーション

私という年輪がはぐくんだ青

 

これからもたくさんの色に出会い

混ざって変わっていく青

 

だけどいつか

私という青から純粋な青がうまれる

まっさらな一点の曇りもない青が

そして、その青は私と違う青に育っていく

 

私はまっすぐな青にあこがれる

私が未完成な青だから